社会福祉法等改正案から見る介護事業所が今から備えるべきポイント(2026/7/30)
令和8年通常国会において「社会福祉法等の一部を改正する法律案」が可決されました。今回の改正は、人口減少や高齢化が進む中でも、地域で質の高い福祉サービスを維持し、介護・福祉事業者が持続的に運営できる環境を整備することを目的としています。
今回の改正は多岐にわたりますが、介護事業所の経営や人材確保に関わる重要なポイントを整理してみたいと思います。
地域包括ケアをさらに強化
今回の改正で大きな柱となるのが、「地域の実情に応じた包括的な支援体制」の充実です。
人口減少や高齢化が著しい地域では、従来と同じサービス提供体制を維持することが難しくなっています。そのため、小規模市町村でも柔軟に相談支援体制を構築できるよう、新たな事業が創設されます。
また、中山間地域や人口減少地域では、「特定地域サービス」という新たな介護サービス類型が設けられ、地域の実情に応じた人員配置やサービス提供が可能になります。
さらに、介護予防と地域住民の支え合いを一体的に進める拠点整備や、地域の事業者同士が連携しやすい仕組みも整備される予定です。
慢性的な人材不足が続く地域では、一事業所だけで課題を解決する時代から、地域全体で支え合う体制づくりへと方向転換が進んでいくことになります。
身寄りのない高齢者支援が制度化
近年、身寄りのない高齢者への支援は介護現場でも大きな課題となっています。
今回の改正では、
・入院手続きの支援
・日常生活の契約支援
・死後事務の支援
などを行う事業が第二種社会福祉事業として位置付けられます。
また、成年後見制度の利用促進を担う「地域権利擁護相談支援センター」の設置も可能となり、地域全体で権利擁護を支える体制が整備されます。
介護事業所にとっても、身元保証や緊急連絡先の問題は年々増加しているため、行政や関係機関との連携がこれまで以上に重要になりそうです。
有料老人ホームの登録制度が創設
今回の改正で特に注目されるのが、住宅型有料老人ホーム等に対する新たな登録制度です。
一定の要件を満たす施設は都道府県への登録が必要となり、人員配置やサービス提供体制についても一定の基準が設けられます。
また、「登録施設介護支援」という新たな相談支援も導入され、利用者負担も発生する予定です。
背景には、近年問題となっている囲い込みや過剰サービスの防止があります。
国会の附帯決議でも、
- ケアマネジメントの中立性確保
- サービス事業者の不当な誘導防止
- 虐待防止・内部通報体制の整備
などが強く求められており、今後はコンプライアンス体制の重要性がさらに高まることが予想されます。
人材確保対策も大きく見直し
介護業界最大の課題である人材不足についても、大きな制度改正が行われます。
まず、都道府県には福祉人材確保協議会の設置が努力義務化されます。
行政、事業者、養成校などが連携し、
- 人材確保
- 生産性向上
- 経営改善
- 処遇改善
を地域全体で進める仕組みが構築されます。
さらに、介護福祉士養成施設卒業者に関する経過措置が令和13年度まで延長される一方、准介護福祉士制度は廃止されます。
ケアマネジャー更新制が廃止へ
現場への影響が最も大きい改正の一つが、介護支援専門員(ケアマネジャー)の更新制度の廃止です。
これまで更新時に義務付けられていた研修制度が見直され、資格更新制そのものが廃止されます。
国会の附帯決議では、
- 研修時間の短縮
- オンライン研修の推進
- 教材の標準化
- 受講料負担の軽減
なども求められており、ケアマネジャーの負担軽減が期待されています。
人材不足が深刻化する中で、離職防止や復職促進にもつながる重要な改正といえるでしょう。
災害対応も平時から準備する時代へ
能登半島地震を踏まえ、災害時の福祉支援についても制度が強化されます。
災害派遣福祉チーム(DWAT)の人材登録制度が整備されるほか、平時から医療・保健・福祉が連携する体制づくりが進められます。
介護事業所においても、BCP(業務継続計画)の実効性や地域との連携体制を改めて見直す必要があるでしょう。
今回の改正は令和9年4月から段階的に施行される予定です。制度が始まってから対応するのではなく、今のうちから情報収集を進め、自法人への影響を確認しながら準備を進めていくことが、これからの安定した事業運営につながるでしょう。
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